大学教員であり、母であり妻。3足のわらじで環境問題に取り組むー千葉知世さん

若き大学教員であり、一児の母としてご活躍されている千葉知世さんのライフワーク。

大学教員としての働き方に迫った第1章に続き、
母として、女性としてのビジネスパーソンの一面をご紹介します。


千葉知世さん
兵庫県猪名川町出身。京都大学総合人間学部を卒業後、京都大学大学院地球環境学舎博士課程に進学し、博士号を取得(地球環境学)。
現在は、大阪の公立大学で准教授として務める。

社会では『女のくせに』を逆手にとって、強みに変える

ー活躍する女性が増えていますが、千葉さんが思う理想の女性の働き方はどのようなものですか?
若い有能な女性が増えてきて、これから女性がどんどん社会に出て行くのはすごくいい流れだと思います。しかし、男性と女性というのは、能力も体力も脳のつくりも違いますので、一つのポジションを男性と女性で奪い合ったり、逆に押し付け合ったりするのは意味がないと思っています。

ー千葉さんご自身も、男性が多い中でご活躍されていらっしゃいますね。
これまでの男性中心の社会ではうまくいかなかった部分や、問題が生じてきた部分に、女性が入ることで社会がもっと良くなり、新たな価値が生まれていく…そういった女性の力を活かした働き方を模索したいです。

ー男女平等と言われる一方で、女性の才能を活かすという考え方は素敵ですね。
一口に男性とか女性とか言っても、その中にもいろんな個性をもった人がいます。そういうダイバーシティをいかに認め合うかが、人間社会が次のステップに進む重要な鍵だと思っています。

 

ー「女性はこうあるべきだ」というイメージや偏見を持っている人もまだ多いですよね。
多いですね。私は大学受験に向けて必死で勉強していた頃、同い年の女友達から「女なのにそんなに勉強して何になんの?」と言われ、その思想自体にびっくりしたことがあります。その子はご両親から「女の子は勉強はそこそこで良い、良い旦那さんを見つけなさい」と教えられていたようです。

ー今も地方では特に、そういった考えの方も多いですよね。
考え方は自由ですが、もっと社会に出て活躍したい、しかし社会の構造によってそれを実現できていない女性もたくさんいるということを言っていくことも大事です。私の場合は、そういうイメージや偏見を受け入れ、逆手に取って強みに変えていくように心掛けてきたつもりです。

出産・育児をする中で見えた女性としての活躍の仕方

ー出産・育児をしながらの仕事は、どうバランスをとっていますか?
出産前に比べると、労働に充てられる時間は半分にも満たないぐらいになりました。でもそれを言い訳にして、仕事を疎かにしたり業績が下がったりすると、次の世代に続いていかないですよね。社会はまだまだワーキングマザー(orファザー)に寛容ではなく、自分はその過渡期にいるので「子育てしてるから大目に見てね」だけでは通用しないと思っています。

ーその過度期の中でどう家庭と仕事に向き合っているのですか?
どうしてもできない仕事が増えてしまう分、生産性を改善したり、量は減らすけど質を上げるという方にシフトして仕事に向き合っていきたいと思っています。まだまだ実現できていませんが。

 

ー不利な環境を逆手にとって、女性らしさを武器にというイメージですか?
「女性らしさ」というのがそもそも何なのかよくわかりませんが、男性の方が得意なこと、女性の方が得意なこと、というのはあると思います。だからこそ、もっと認め合って、お互いが腹を割ってフラットに対話しながら、協力していけたらなって思いますね。

若くして大学教員、結婚・出産の道を共に歩んだパートナーの存在

ーそんな千葉さんの旦那様は、どのような方ですか?
恋愛も仕事(キャリア形成)も一緒に出来る人であり、親友でもありますね。夫は法律関係の仕事なので、私も研究職として色々教えてもらって勉強させてもらっているし、私からも夫に有益そうな情報があれば提供したりと、お互いに高め合えるパートナーになっています。旅行に行った際なども、一緒に現地にある問題を見て回ったりして、夫の観点で言ってくれることを自分の研究のネタにしたりしています(笑)。

ープライベートと仕事の両立にはお互いを認め合えるパートナーの存在は大きいのですね。
どんなパートナーを選ぶかでその後のキャリアや生き方がかなり変わると思うので、パートナー選びは大事だと思います。仕事もプライベートも一緒に楽しめる人を選べば「仕事と俺とどっちが大事なんだ!」みたいな問題も起こりませんしね(笑)。

仕事にも繋がる、趣味の楽しみ方

ー仕事と子育てや家事はどのようにバランスとっていますか?
家事や子育てを一人でするのは無理なので、夫には一通りできるように練習してもらいました。その過程ではかなり喧嘩もしましたが(笑)いまでは良いバランスができています。夫が家事育児をしてくれるので、私もたまに自由時間をもらえます。仕事帰りに一人でお茶するのが、ささやかですが至福です。

ー素敵なご家族ですね。家庭のことは仕事にどんな影響を与えていますか?
家事や育児でも環境のことを考えています。例えば、料理をする時はこの野菜をどう使ったらゴミを出さずに済むかとか、どの地域の物を買えば一番環境へのダメージが少ないかなどですね。自分が大切だと思うことを基準にして、それに従っています。

ー千葉さんがやりたいことを、全てやっていらっしゃるイメージが、すごく伝わります。
自分の使命は環境問題の解決なので、それに向けて少なくとも何か一石を投じるというところまでは、自分が生きている間にやりたいと思っています。まだ何もできていないので焦っていますが。

 

ー千葉さんが環境問題の解決をミッションに掲げていらっしゃる理由を、教えてください。
物心ついたころから環境のことを考えていたので、私にとっては当たり前すぎて理由はありません。自然が壊れれば人類はだめになってしまいます。これは色んな理屈で説明できますが、実感レベルで十分理解してもらえるのではないでしょうか。それに、私は自分の子どもやその先の世代に美しい自然を残したいし、人間の繁栄に、ほかの生物の生命を犠牲にしすぎているのもやめたいです。

ー理想の働き方はありますか?
落合陽一さんは「日本最高戦略」で「百姓(100の業を持つ人)」のように生きるという働き方について書かれていましたが、私もこれに近いイメージをもっています。いろんなことに興味関心があるので、「環境」という軸だけは持ちつつ、あまり一つのことに固執せず、色んなことをやっていきたいと思っています。

ーまさに百姓のような生き方ですね。
節操がないと言われるかもしれませんが、自分にはそういう働き方の方が向いている気がします。すでに母・妻・大学教員という三足のわらじなので、死ぬ時までには百足くらいわらじを履いて、それらがいい具合にバランスとれていたら、人生飽きずに過ごせそうですね。

ー女性のロールモデルとして勉強になりました。ありがとうございました。本も出版予定とのことで、今後も応援させていただきます!

一児の母・若き大学教員 千葉知世さん「大学の先生」の働き方とは

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