医療の陰の立役者、圧倒的な知識量で画像を見抜く 「放射線科医」の仕事とは。青柳泰史 医師

お医者さんと聞けば、ドラマのように難解な手術をしたり、
町医者のように地域の人たちの身体の悩みに答えるようなイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

医者といってもいろんな科があり、その科によって治療する場所も方法も違えば、お医者さんたちのカラーも違うと聞いたことがあります。

そんな多様な専門職である医者の中でも「放射線科」というニッチな分野で、人々の健康を支える陰の立役者がいるのだそう。
都内の病院で放射線科医として働く青柳さんに、放射線科医の魅力と働き方について聞いてみました。


青柳 泰史さん 放射線科医(画像診断医)
福岡県北九州市出身31歳。画像診断のプロフェッショナルと言われる放射線科医として都内の病院に勤務。株式投資が趣味。
インスタグラム

放射線科医の仕事とは

ー放射線科医とは、具体的にどのようなお仕事ですか?
CTやMRIなどで撮影された画像に対して、診断をする仕事です。「放射線」と聞くと放射線技師が有名ですよね。放射線技師は患者の体を撮影する専門で、私たちはその撮影された画像に対して、診断をしています。

基本的に患者さんと接することがないのですが、医師の診断や検査依頼の内容や目的と合わせて診断をするので、画像診断医とも言われています。大きい病院にも10~20人しかいないかなり珍しい専門です。

ーなぜ放射線科医になろうと思ったのですか?
学生時代に出会った、放射線科医の教授の影響が大きいです。わたしが医学部在学時に留学をしたいと思い、その際にたくさんサポートしてもらいました。結果的にボストンに留学できたのですが、こんな大人になりたいと興味を持ちました。

医療に関わる仕事はどれも魅力的に思ったのですが、放射線科医になることに迷いはありませんでした。進路をなるだけはやく決めた方が、専門的な勉強にも身が入り繋がりもできるので就職も有利だと思ったんです。

ーいろんな科の画像診断をするとのことですが、他の専門医と大きな違いはどこですか?
放射線科医はいろんな視点が求められることでしょうか。他の専門医だと、それぞれの分野や臓器を突き詰める必要がありますが、画像診断をするのには様々な可能性を考えなければなりません。
例えば、婦人科で診断された病気が、実は外科的な問題が隠れていたとか・・・画像に写ってる事実をフラットな目線で解明する必要があります。

それぞれの専門医とやりとりをするため、中途半端な知識では命に関わるミスが起きてしまいます。だからこそ日々の勉強が欠かせないのです。

知識と経験で磨かれる技術

ー勉強を苦に思ったことはないですか?
いい意味で自分の好奇心や勉強意欲を満たしてくれるので、むしろ勉強もやりがいを感じています。
わたしもそうですが、放射線医師の仲間は仕事が終わったら「よっしゃ!勉強できる!」と勉強を楽しみにしているほどです(笑)勉強の意欲が高い人には向いている仕事かもしれません。

それでも新人の時は、どう診断したらいいのかわからず苦労しました。経験がものを言う仕事でもあるので、できるようになるためには経験を積むしかありません。
人それぞれ克服の仕方はあるでしょうが、私は同期の2倍以上働いて克服できるようにしました。朝早く病院へ行って土日も働いていたので、夢に画像が出てくるほどでしたね。

 

ーそれだけ熱心に勉強されていると、病院からの信頼もあついのでしょうね。
実は、そんなこともないんです。医療の業界的にもこの仕事の立場は低くって・・・やはり患者さんと顔を合わせないからなのか、病院内でも認められていないと感じる部分はよくあります。
年収の部分で言うと、他の専門医と比べたら数百万ほど劣ってしまいますし(当直や緊急の呼び出しがないせいもありますが)アメリカの放射線科医は年収4000万円くらいいくそうです。もちろんアメリカは医療裁判がよく起こるので、その分責任も大きいのですが。

ー研究者のような立ち位置として、苦労が可視化されにくい部分もあるのでしょうか。
そうですね。やりがいと責任感を持って仕事をしているので、認められるように頑張ることも自分たちの仕事だと思うんです。
まずは画像診断を通じて医療に貢献して、見られ方を変えて行かねばと思っています。

そのためにも高度救急救命センターで日当直をして、月に1~2回問診もしているんです。検査依頼も自分で出して、画像診断も自分でして、治療方針もやり抜くことまでやって・・・お医者さんっぽい仕事もしているんですよ(笑)
自分で問診した方が画像でのイメージもつきやすいので、診断技術も上がります。

ー認知をあげるために結果をだす、と。
そうですね。他にも母校で、放射線科医として学生向けの講義を行っています。画像診断という仕事を、学生にも知ってもらえたら嬉しいです。今後も自分から、未来の医者や患者さんと積極的に触れ合う場を作っていきたいです。

好奇心に正直に、将来の展望

ー勉強も熱心にされているとのことですが、プライベートではなにを充実させていますか?
健康に関わる仕事をしているので、ジムで体を鍛えたりしています。あと投資もやっていて、株やお金の勉強をすることが好きです。
医者というと高級取りなイメージはありますが、だからこそ管理するためにマネーリテラシーは必要だと思うんです。「医者がお金の話をするのは品がない」と思われる業界ではあるのですが、わたしは積極的に学んで周りにも共有していきたいですね。

株をやることも仕事同様に、自分の興味から勉強に繋がっていくので楽しいですし、好きだから続けられています。

ー今後のキャリアは、どう描いていますか?
正直AIの発達で画像診断の仕事は30年後、なくなるのではないかと思っています。一緒に働いている仲間たちもそういった危機感を持ってます。だからこそ、どんな状況でも生き残れるように、技術と知識を磨いておきたいなって。
画像診断ができるから患者さんと向きあって、広い知見から説明できるというのは、放射線科医としての強みだと思うんです。

将来はそういった強みを生かして開業するなり、自分の法人を作りたいと思っています。そのための情報発信も必要になってきますが、放射線科医の認知をあげて、もっと画像診断を身近に感じてもらえれば嬉しいです。


青柳 泰史さん 放射線科医(画像診断医)
福岡県北九州市出身31歳。画像診断のプロフェッショナルと言われる放射線科医として都内の病院に勤務。株式投資が趣味。
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