老舗エレベーターメーカーが着手する注目の温暖化対策「稼げるCSR」とは。ダイコー株式会社 兒玉康智氏

100人以上乗れる大型エレベーターや自動車用のカーリフト、デザイン性に富んだガラス張りのエレベーター等を扱うダイコー株式会社。

全国で名の知れた老舗企業が取り組むCSRに、今注目が集まっています。


ダイコー株式会社 専務取締役 兒玉康智氏

(インタビューアー・編集長 鳥巣愛佳/とりっすー

老舗企業が着手する注目のCSR施策とは

とりっすー
注目のCSR施策とは、どういったものですか?
兒玉専務
生ごみ処理の際に排出される膨大な量のCO2を削減していく取り組みです。弊社では生ごみ処理機の設備設計・販売、メンテナンスを行っております。
とりっすー
生ごみ処理で出るCO2は、そんなに問題になっているのでしょうか?
兒玉専務
生ごみ1,000kgを処理するのに約2,000kgものCO2が排出されると言われています。(※1)日本のCO2排出量も世界で8番目に多いこともあり、2015年のパリ協定で、2030年までに温室効果ガスを26%削減することが可決されました。
とりっすー
CO2削減は世界からみても、先進国である日本が頑張らないといけない問題なのですね。そういえば生ごみの運搬や焼却に使う燃料を作る際、もちろん燃焼時にもCO2はたくさん排出されているなと感じました。
兒玉専務
弊社が取り扱う生ごみ処理機を活用すると、生ごみ1,000kgの処理に対して、CO2の排出をわずか約160kgにまで抑えられます。つまり92%のCO2削減になっているのです。(※1)

1日で生ごみ100kg処理する山形県の小学校の生ごみ処理機

※1:NPO法人 生ごみリサイクル全国ネットワーク資料より

CO2を92%削減する生ごみ処理機の仕組み

とりっすー
この生ごみ処理機はどういった仕組みになっているのですか?
兒玉専務
この処理機に入れた生ごみは微生物によって発酵・分解され、最後には水と炭酸ガスになります。自社ででた生ごみを、自社で24時間かけてすべて分解して、排水として流していくイメージです。
とりっすー
排水はそのまま流して大丈夫ですか?ドロドロだったり悪臭がしたりしませんか?
兒玉専務
排水は水質汚濁防止法に基づく規制にも対応出来る様に管理されていて、ドロドロの排水がでてくる訳ではありません。処理機の中でしっかり酸素の取り込みをし、微生物がしっかり働いてくれるお陰で、臭気もほとんど気にならない程度です。

処理機に入れた生ゴミはこのような排水になります。

とりっすー
安心しました(笑)家庭の生ごみの処理にも一苦労なので・・・。

社会的かつ経済効果の高い事業を

とりっすー
ダイコー株式会社は日本でも有数のエレベーターやカーリフトなどの昇降機事業を行われている会社ですが、どうして生ごみ処理の事業に着手されたのでしょうか?
兒玉専務
昇降機の事業では常に人の体を預かっていることもあり、昼夜問わず全国どこへでも30分以内に駆けつけて修理ができるよう、メンテナンス体制が整っています。この体制は、全国2000台以上の設置がある生ごみ処理機のメンテナンスをするにも大いに活用できると思いました。
とりっすー
既存事業と相性もよかったのですね。
兒玉専務
CSRとしても社会のためになり、なおかつ経済効果も高い施策の取り組みをしようと思ったんです。
とりっすー
経済効果が高いというのはどういったことですか?
兒玉専務
例えば、某有名ホテルは年間約200トンの生ごみ処理に、720万円のコストがかかっていました。これらの処理はすべて業務委託で行われていたのです。
とりっすー
生ごみの処理だけでも、燃料や運搬や人件費・・・かなりのコストですね。
兒玉専務
しかし生ごみ処理機導入後は、年間55,2万円のランニングコストしかかかっていません。つまり年間664万円のコストが削減出来ているのです。投資金額も5年以内で回収できる計算になっています。
とりっすー
CO2を大幅に減らして環境のためになりつつ、大幅なコスト削減ですね。いいとこづくしで怖いです(笑)

CO2削減でビジネスチャンス。国認証の「Jクレジット制度」

兒玉専務
さらに注目すべきは、このCO2削減自体も大きな価値を持ち始めているということです。
とりっすー
どういうことですか?
兒玉専務
国が認証している「Jークレジット制度」というもので、CO2を削減したという権利を売買することが可能になりました。(※2)
とりっすー
CO2を削減した会社が権利を売って、CO2を削減したい会社が買うということですね。
兒玉専務
今は省エネ対策や環境貢献企業としてのPR効果等を目的に、CO2削減の権利を買いたい企業の方が多いんです。受給バランス的には買い手が増えてきている為、1トンあたり900円台だったCO2排出枠の価格が今や1500~1800円台近くまで急騰しています(平成31年4月入札)。
とりっすー
CO2を減らせば減らすほど、儲かる仕組みだ・・・。
兒玉専務
1日1トンごみを捨ててる業者なら毎日2トンのCO2 が出ますが、生ごみ処理機導入後はCO2が約1,890kg削減可能となります。これが年間360日稼働の業者だと1890×360日=680トンものCO2削減になるんです。今現在、CO2を680トン削減するということは100万円以上で売買される価値がある、ということになります。
とりっすー
CSRというと、社会貢献度としては高くともビジネスとしては難しい印象でした。生ごみ処理機を普及させることで、社会貢献だけでなく経済効果がこんなに高いとは、すごく意義のあることですね。

(※2)参照:https://newswitch.jp/p/11597

アジア・日本国内にて2,700台 以上が導入

とりっすー
実際の生ごみ処理機は、どのような施設で活用されていますか?
兒玉専務
ホテルや病院・社員食堂、ショッピングモールやスーパーマーケット、大型機では食品加工工場などが多いです。人が多かったり生ごみが多く出る施設で、重宝していただいてます。
とりっすー
自社ででたゴミを自社で処理できるのはとてもエコですね。
兒玉専務
そこも注目ポイントです。「SDGs」という言葉をご存知ですか?
とりっすー
聞いたことあります!
兒玉専務
「SDGs」とはまだまだ認知度が20%程度と低いのですが、貧困、食糧不足、環境、ジェンダー、平和や公正 等々、2030年までに達成すべき国連が定めた17個の開発目標のことなのです。逆に、達成していかないと大変なことになります。世界中が日本人と同じ生活水準を維持していくには「地球が3個分ないと資源が持たない」なんて言われているほどです。


引用:https://miraimedia.asahi.com/sdgs-description/

とりっすー
生ゴミ処理機を導入することは、11番や13番のゴールに関わっていますね。
兒玉専務
こういったSDGsへの取り組みは今後さらに社会的な意義を持ってくると考えています。直近では企業の長期的成長に重要なESG(環境・社会・ガバナンス)が伴った企業に対する投資額が、31兆ドルを超えたと言われています。弊社も引き続きCO2削減という切り口から、環境問題にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。
とりっすー
環境をよくするための国や世界の施策も、このように制度が整っている事実も知りませんでした。
兒玉専務
環境によいことと同じくらい、経済効果が高いことも重要ですよね。各社しっかりビジネスとして売上をあげることがダイレクトに世界平和へと繋がっていく。そんな明るい社会が実現出来ればとてもステキなことだと思います。
とりっすー
働く人こそ今後はSDGsを意識することで、社会的にも経済的にもよりいい影響がうまれそうですね。なんだか今まで距離を感じていた環境への取り組みが、楽しくなりそうです!ありがとうございました!

ダイコー株式会社

ABOUTこの記事をかいた人

ASSIST編集長。早稲田大学商学部卒、競技エアロビックはじめダンス歴17年の経験を生かし4~90歳の運動指導に従事。女性のためのヘルシービューティをプロデュース。 2014年インターナショナルエアロビックチャンピオンシップ日本代表。 2015年学生エアロビック選手権優勝。 フィットネスウエアブランド「CLAP」ライダー。 複数のウェブメディアを立ち上げ13億円のメディア売却事業にも携わる。